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行動文化(188) 「青」の相 

関東にいた青年時代、横浜の街を歩いていて、道端に店を構えている人相見に「ちょっと」と呼びとめられた。忘れもしない、「あなた、青の相が出ていますよ」という。
「青の相? それは何を意味しますか?」
「よくない相です。災厄が待っています」――具体的に知りたかったらここへ、というわけだ。なあんだ、敵はおれをサクラに使いたいのか。
 当時の筆者はこの種の予言を気にしなかった。興味がなかったわけではないか、大道易者や人相見ふぜいを相手にしている姿を他人に見られたくなかった。
いま思えばバカなことをした。ほとんどの人相見が骨相どまりだが、この「青」とは気色の一種である。気色がみえれば一流の相士。なみの人相見ではない。
 あの時の筆者に出ていた「青」とは、職場の上司からの左遷の予告だった。具眼の相士の鑑相とはこんなものだが、生来の独善と偏見、あきれたことに当時はこれがおれの流儀だと思っていた。機能集団の命令系統の中に身を置いていて許される態度ではない。先輩方も上司も腹の中ではこの野郎、どうしてくれようと思っていたはずだ。
それが前額部に出ていた。これに鼻筋を中心に顔を左右に二分する神動線か、命門(耳の前)に黒色でも加わっていたら左遷どころでは終わらず人生一巻の終わりは必至だった。
左遷、事実その通りになったが、当時はそんな目に遭ってもさほどまいらなかった。筆者の場合、この傲慢さはガキのころからのもので周囲の冷遇や無視など屁でもなかった。
若さとは無残なものである。相士に呼び止められた当時は持ち前の独断と偏見が災いして孤立、仕事に行き詰まっていたのは事実である。

筆者はあの事があってから間もなく離職、以後は古武術、禅、霊術、刀剣と興味本位の極道をつづけた。結局これといった災厄に出合った記憶はないが、しかし知らぬがホトケ、傍目にはそんなものではなかったろう」
来し方を振り返れば、よくこれまで生きてこられた見のである。周囲にも迷惑をかけた。のち支那の本場で相道を究めた師(五千言坊玄通子)に出合って仙道をまなぶことになったのだが、その時は「青の相」のことなどすっかり忘れていたし、師も筆者の相貌には何もいわなかった。※近刊案内 『武士道と武道(英文)』 『予知』――いま甦る古代支那の開運の科学  『垂直思考』――思想家野中日文の筆業の総決算  『美術カレンダー(部数限定)』――剣者野中の筆のすさび          ヘッドライト大阪 (06・6609・9750)
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テーマ: 文明・文化&思想

ジャンル: 学問・文化・芸術

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